JRC発表のASEAN3ヶ国訪日調査結果に見る北海道観光の状況

リクルートのじゃらんリサーチセンター(JRC)が、シンガポール、タイ、マレーシアのASEAN3ヶ国において、観光で訪日したことのある経験者を対象に旅行調査を実施し、その結果が発表されました。

主に北海道観光の観点からこの調査結果について考えてみたいと思います。

訪日旅行目的。北海道の場合は・・・

上記のASEAN3ヶ国における、訪日旅行目的を全体集計で見ると、上位は、

  • 1位:美味しいものを食べる
  • 2位:街歩き、都市散策
  • 3位:買い物、アウトレット
  • 4位:世界遺産、名所旧跡の観光
  • 5位:花見や紅葉などの自然観賞

となっていますが、北海道を訪れた人だけに絞ると、

  • 1位:美味しいものを食べる
  • 2位:温泉や露天風呂を楽しむ
  • 3位:世界遺産、名所旧跡の観光
  • 4位:花見や紅葉などの自然観賞
  • 5位:街歩き、都市散策

という結果になります。「美味しいものを食べる」という楽しみ方は日本全体に期待されている項目と言えますが、北海道の場合は、「温泉や露天風呂を楽しむ」が2位になっていることが特徴です。

北海道観光で有名な「旭山動物園」に関連する「テーマパーク(遊園地、動物園、博物館など)」の項目は、北海道では第9位でした(全体集計では6位)。

「非常に満足」した旅行中のイベント。北海道の場合は・・・

日本旅行中に実施したことで「非常に満足したこと」ランキングを日本全体で見ると、上位は、

  • 1位:花見、紅葉、雪景色などの季節の風景を見る
  • 2位:日本式旅館に泊まる
  • 3位:農村風景や田園風景を見る

となっていますが、北海道の場合、

  • 1位:お祭りやイベントを見物、参加する
  • 2位:和牛や豚肉の料理を食べる
  • 2位:アウトドア・スポーツ(同率2位)

と、全体集計とは全く異なる結果になっています。

1位の「お祭りやイベントを見物、参加する」は雪まつりのことを指すと思われ、雪のない国々から訪日された観光客にとって、雪まつりはやはり非常に楽しめるイベントであることが改めて分かります。

また、全体集計では「花見、紅葉、雪景色などの季節の風景を見る」が1位ですが、この項目は北海道では6位になっています。夏の清々しい大地の風景や、冬の雪景色や流氷など、豊かな自然を誇る北海道ですが、「アウトドア・スポーツ」が2位となっているように、見るだけではなくラフティングやスキー、スノーシューといった「体験型」まで踏み込んだ観光コンテンツがより高い満足度を与えることが分かります。

また、「刺身、寿司などの生ものの日本食を食べる」という項目もありますが、北海道では「花見、紅葉、雪景色などの季節の風景を見る」と同じ同率6位になっています。海鮮の美味しい北海道ですが、これらの海鮮より「和牛や豚肉の料理を食べる」方が2位と上位になっていることがおもしろい結果です。翻訳ガイドレシーバーを搭載した観光バスを運行する「ほっとバス」さんのツアーコースには、北海道産の美味しいお肉がいただけるこだわりランチが含まれていますが、正にニーズに合致したプランと言えます。

「次回実施したいこと」と「次回行きたいエリア」

訪日中の体験率は低いが、「次回やりたいこと」として高い支持を集める旅行体験の全体集計として特徴的なのは、

  • 露天風呂・大浴場に入る
  • 花見、紅葉、雪景色などの季節の風景を見る
  • 日本式旅館に泊まる
  • お祭りやイベントを見物、参加する

などがあります。北海道を訪れた人の旅行目的2位の「温泉や露天風呂を楽しむ」に関連する「露天風呂・大浴場に入る」や、北海道での満足度ランキング1位の「お祭りやイベントを見物、参加する」が上記ランキングに含まれているということは、「次回は北海道」というニーズがあるのではないかと考えられます。

その結果が顕著に現れているのが「次回行きたいエリア」ランキングです。

  • 1位:山梨県・静岡県/富士山
  • 2位:北海道/雪まつり
  • 3位:北海道/富良野

一位は富士山ですが、北海道の雪まつりやラベンダーで有名な富良野が上位を占めています。日本を最初に訪れる人は、成田空港や羽田空港、関西空港から入国し、京都、名古屋、富士山、東京といったいわゆるゴールデンルートのツアーに参加する人がどうしても多いため、北海道のインバウンド観光にとっては、日本を2度3度訪れる人をターゲットにした展開が必要なのかもしれません(もちろん上記のゴールデンルートに勝る展開も必要ですが)。

なお、日本への旅行検討に際し、他に候補となった競合国は、1位「韓国」、2位「中国」、3位「台湾」となっています。つまり、一度日本を訪れた人にリピートしてもらい北海道へ訪れてもらうには、国内の競合エリアの他、これらの競合国も意識した展開が必要になります。ゴールデンルートで日本を楽しんでいる外国人観光客に北海道をアピールする機会を多く作るのも効果的かもしれませんね。

訪日前後の「旅行情報接触メディア」

この結果で一番驚いたのが、「宿泊」に関する情報入手メディアとして、「ホテルのHPから直接予約」が1位だったこと。これはもちろん個人旅行の人が対象ですが、外国人観光客の宿泊を見込むなら、ホテルのホームページは多言語化および多言語によるSEOの実施、対象言語のポータルサイト掲載などに取り組む必要がありますね。

また、訪日後に役に立った情報機器及び情報源として、「自国から持ち込んだスマートフォン」が55%とダントツのトップです。着地型のオプションツアーの情報を提供するならスマートフォン対応は必須と言えますね。もちろん、その情報にたどり着くためのいろいろな仕掛けも必要です。

この「バスめぐ北海道」も多言語化、スマートフォン対応が必要だと改めて感じた調査結果でした。

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